#top

特定非営利活動法人 モレキュラーインフォマティクス機構 (Molecular Informatics Corporation)
設立代表者  工位 武治 (大阪市立大学 大学院理学研究科)

これまでわが国が経験した高度経済成長期には、国内の化学および化学関連企業の多くは海外からの先進的な科学技術を導入し、専ら応用を重要視した研究技術開発を推進してきた。このような化学系技術開発の過程においては、企業は、内外の大学などの「学」側が保有するシーズ的あるいは潜在的な技術(知的財産)に依存する必要はなかった。しかしながら、今日、高度成長経済の終焉と経済活動のグローバリゼーションが急速に進行する時代を迎え、とりわけ経済的な事業においては、選別と特化・集中が求められるだけでなく、先端ナノテク技術をはじめ企業サイドの研究開発の高度化・学際化に対応した戦略的な未来技術と独創的な技術開発力の育成が求められている。

     このような時代の要請に対して、産官学が連携して、わが国の産業基盤技術の一つである化学・物質科学技術分野においても技術革新を先導できるシステム構築を実現することが焦眉の社会的な課題となってきた。今日では、シーズ的な基礎研究開発から応用・製品化に至るまですべてを「産」側だけで遂行することは、もはや難しくなった。さらに、企業の大小を問わず国際競争力を強化するためにも企業外の「学」などが保有する新産業技術シーズや高度な学問的・専門的な物質設計や基礎解析の能力を「産」側に導入し、「産」側の応用能力と融合する必要に迫られつつあると言ってもよい。

 ナノテクを支える新しい材料科学やポストゲノムを視野に入れた創薬開発などセントラルサイエンスとしての役割をもつ化学産業分野の技術革新は、他の産業分野に比べて波及効果が大きい。従って、この分野で独創的な化学技術開発力を育成することは、21世紀の経済および社会活動のグローバリゼーションに対応するために戦略的に重要である。一方、今日高度に専門化された化学技術(化学合成技術、分子設計技術、化学ナノ分析技術、ナノ分子機能解析・評価技術など)、および新物質科学を支える新量子化学・分子科学技術に関するノウハウや新産業技術シーズは、大学などの「学」側に蓄積されており、産学間の技術融合、技術移転による創造的な技術の創出が実現できる環境が醸成されつつある。

     化学技術および化学産業分野では、科学技術の特質上、化学技術固有のノウハウ的な要素技術に熟知し、技術の価値評価を専門的に判断できる専門家の協力が不可欠である。すなわち、新しい形態で「技術融合」などを実現させるには、このような専門家のコンソシアム=産学・社学間のインターフェース機構が不可欠であり、化学産業分野における技術革新には、「学」が保有するシーズと「産」などのニーズをマッチングさせるインターフェースシステムの整備確立が社会的急務なのである。このインターフェースシステムは、化学産業分野に特化した産業科学教育を実効的に普及・増進できる機構であることが期待される。